今回はPAPエモーションに続いて、久々のモーター専用機の試乗である。
この機体のスペックはセラークの後継機「パルサー」とまったく同じであり何一つスペック上の違いは無い。「パルサー」にモーター用の様々な機構を盛り込んであるのが「キネティック」だ。自分は日頃セラークを使用していたために、「キネティック」が出るときに「待ってたがな〜・・・!」と、試乗をしないですぐに注文をした。つまり今回は自分の機体なので長所・欠点を知っており、メーカーにとっては「そこまで言うの・・・!?」的に突っ込んだレポートになるかもしれない?フライヤーの立場として、感じているままにすべてをお伝えしたい。
構造
まず安全の為に、一番始めに伝えなくてはいけないことがある。多くの方がショートカラビナを使用していると思うが、ウインドテックを始めいくつかのメーカーは、カラビナを取り付けるライザーのフックポイントが厚くできている。その為カラビナのゲートが途中で止まりやすい。このまま飛ぶと、すぐにでもカラビナが破損する。クローズはバネの力を借りずに必ず手でやってほしい。ホコリや砂、それに僅かなサビなどでさらに閉じなくなる可能性が高くなるので習慣付けをしよう。
ライザーとメインラインは、「パルサー」より丈夫に出来ている。特にメインラインはキャノピーの寿命まで持ちそうである。今回初の新機構があり、翼端折り固定装置が付いている。翼端折りロープを引いた後に金具でロックできるのだ。これについては後ほどじっくり説明しよう。トリマーの幅が15cm程もある。その挙動の違いは如何に・・・?大き目のアローズデザインがなかなか斬新だ。ブルー/ホワイト/レッドでトリコロールカラーとなっており、HONDAファンの自分としては言うことナシだ。
立ち上げ
ラインチェックは多少面倒だ。翼端折りロープの先端に重めのボールが付いており、重力で少し引かれてしまうことがある。立ち上げ中にそのままロックされ、僅かな翼端の変形が生じ傾いて上がってしまう事がある。ラインチェック時には、ロープが引かれていないことを確認しよう。又、私は先程の写真の用にAラーザーにキーリングをかぶせロープがブラブラしないようにしている。Aライザーは、長い翼端折り用と短いセンターよりの2本ある。立ち上げには短いAライザーのラピットリングの位置で、長いAライザーと共に握った方が一番楽であった。
立ち上げはスムーズで、無風でも程よいラインテンションからしっかりとキャノピーが膨らんでいるのが分かる。トリムライザーには2本のトリマー位置の目安として、白い糸が縫い付けてある。取扱説明書には「2段階のスピードフライト用」と表示してあるが立ち上げが重く感じたら、2cmくらい伸ばすと楽になるだろう。頭上キープ性が良くあっさりとT/Oする。
フライト
スペックがまったく同じで、山用とモーター用に派生したキャノピーは始めてなので一番気になる山飛びで「パルサー」と乗り比べをしてみた。結果、操作性・浮き共に明確な差を見つけられなかった。これなら両刀使いのフライヤーで、山がメイン気味の方は「パルサー」モーターがメイン気味の方は「キネティック」という選択肢が可能であろう。
さて、モーターでのフライトだがセラークの個性を強く引き継いでいる。トリマーが全引きなのに、運動性能がピカイチだ。しかも中級者以上にとって程よいバランス感覚がある。ピッチング安定性も申し分無い。反面、ブレークコード操作のみでバンクが良くかかり、旋回はかなり小さく回ることができる。ローリングもDHV1−2とは思えないほどに少ないコントロールでバシバシ深く入る。しかしラインテンションがしっかり分かるので危うさが無い。
トリマーオープンではどうだろうか?トリマー機構はライザーのDリングでUターンされてから装置がついているので、フライトしながらレバーを押しても一気に伸びきることが無く安心だ。ストレートに装置に付いているのものでは何度も潰れているので怖い思いをしている。まずスピードの違いをGPSで計った。 バリオで上昇率が±0m/sになるようにパワー調整をしながらトリマーを3cmずつ長くしていった。3cmごとにスピードが1k/mずつ速くなっていく。結局5k/mのスピードアップが可能だ。
挙動の安定性はどうか?風速は4〜5m/sで内陸部でのフライトだ。何もしなければ相変わらず落ち着いているが、いったんブレーク操作を行うとモーターで「クウォークU」や「シグマ5」を通り越して「オメガ5」に乗っているような感覚だ。止める時の収まりが悪い。しかし腕に覚えの有るフライヤーとっては2つの機体を持っているような「一粒で2度おいしい」状態だ。中級者にはもともと運動性能が高いので、トリマーオープンでは移動用と考えた方が無難だ。
翼端折りは始め専用Aライザーで行った。緊急降下方法として翼端折りがたいして約に立たないことは皆さん感じているだろうか?この方法では翼面積が思ったほど小さくならず緊急降下には至らない。(-2m/s位)ところが「キネティック」では-3、5m/sを得ることが出来たのだ。始めは「???」であったが写真を見て納得した。翼端が垂直に折れるポイントがあるのだ。今までの機体では、翼端がきれいに後に折りたたまれるか、翼端が戻ろう戻ろうとして機体が不安定になるかのどちらかだった。この機体では翼面積を減らすだけではなく、翼端に十分な空気抵抗を与えて大きな沈下率を得ることが出来る。 1秒で1、5mの違いは1分間で90mだ。スパイラルをまだマスターしていないフライヤーが、急いで降りなくてはいけない時には大変助かるだろう。
初登場の翼端折り固定装置の件だが、実は使いづらい事が確認できてしまった。引き込みロープはライザーを垂直に引き込むようになっているので、かなりの力を要する。やはり翼端折りはライザーで手首を外側にねじりながら引き込む方が楽である。又、ロープ先端のボールが低い位置にあるので、引き込む時にはブレークコードから手を離していなくては失速してしまう。自分としては長時間の翼端折りに必要性も感じていないので、撮影の後ロープを外している。ライザー周りがスッキリしてラインチェック時や立ち上げに神経を使うことが無くなり快適だ。セラークに比べ浮きが良くなったようだが、小回りが利き易いので、エンジンカット後の指定点ランディングも狙いやすかった。
まとめ
デザインといい、性能といいこのキャノピーに満足をするフライヤーは多いことだろう。ラインの太さやライン縫い付けのリップの補強は、かなりの寿命の長さが期待できる。キネティックはウインドテックがモーター用として始めて市場に投入した自信作だ。
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